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乳がんの生存率~早期発見であればあるほど生存率は高まる

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乳がんと「生存率」について

乳がん

国立がん研究センターの研究班「わが国におけるがん登録の整備に関する研究」が2016年1月20日に公開したデータによると、乳がんの「5年相対生存率」は92.9%、「10年相対生存率」は82.8%で、他のがんに比べ生存率が高いという結果が出ています。

乳がんはステージ0~4に分けられ、数字が大きくなるほど進行していることを表しています。
乳がんの場合、乳房のシコリの大きさ、リンパ節転移の有無、他臓器転移の有無などから、どのステージなのかが決定されます。

ステージ0

がんが乳腺の中に留まった状態の早期の乳がんで、非浸潤がんとも呼ばれます。
5年生存率/約95%

ステージⅠ

シコリの大きさが2cm以下で、ワキの下のリンパ節への転移はみられない。
5年生存率/約89%

ステージⅡa

シコリの大きさが2cm以下で、ワキの下へのリンパ節へ転移がある、またはシコリの大きさが2~5cmでワキの下へのリンパ節への転移がない状態。

ステージⅡb

シコリの大きさが2~5cmでワキの下のリンパ節への転移がみられる。
5年生存率/約78%

シコリ

ステージⅢa

シコリの大きさが2cm以下、ワキの下のリンパ節に転移があり、さらにリンパ節が周辺の組織に癒着している状態。
5年生存率/約59%

ステージⅢb

シコリの大きさやワキの下のリンパ節への転移に関わらず、シコリが胸壁に癒着している、または皮膚にシコリが出ている、皮膚が崩れたり、浮腫んでいるような状態。炎症性乳がんもこれに含まれる。
5年生存率/52%

ステージⅢc

シコリの大きさに関わらず、ワキの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節に転移がみられる。また、鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある。
5年生存率/約50%以下

ステージⅣ

がんが乳房やワキのリンパ節ばかりでなく、他の臓器に転移している場合。乳がんから転移しやすいとされている臓器は骨、肺、肝臓、脳など。
5年生存率/約25%

日本人女性と乳がんのデータ

日本では乳がんが増加しており、国立がん研究センターによると2016年には、9万人の日本人女性が乳がんにかかると予測されました。
乳がんで亡くなる女性は2013年には1万3000人を超え、35年前と比べると3倍以上になっています。

各がんの5年生存率・10年生存率

5年生存率は「がんの治療開始から5年後生存している人の割合」のことをいいますが、このなかには再発せずに生存している人と、再発して生存している人が含まれています。
また、そのがんが原因で亡くなった人も、他の原因(事故や他の病気など)で亡くなった人も「生存していない」ほうにカウントされます。

つまり5年生存率というのは、純粋にそのがんで亡くなった数値とは多少異なるということです。

生存率

10年生存率も同様で、いずれもがんのできた部位や、発見されたときのステージなどにより数字が異なってきます。
ステージはあくまでも最初の診断時に基づくものなので、診断時はステージⅠだったものが、数年後に転移したのでステージⅣになった、というような言い方はしません。

特殊なケースを除いて、どのような種類のがんでも、発見されたステージが早いほど生存率が高くなるといえるでしょう。

全国がんセンター協議会(全がん協)が発表している、部位別がんの5年生存率のデータによると以下のがんは、ステージ1で発見できた場合は、80%以上の生存率となっています。

  • 胃がん
  • 大腸がん
  • 喉頭がん
  • 乳がん
  • 前立腺がん
  • 甲状腺がん

これらのがんは、進行がゆるやかなことが多く、ステージⅠで発見できれば高い確率で完治できるからです。
なかでも乳がんはシコリなどの初期症状が出やすく、定期検診ばかりでなくセルフチェックで発見しやすいという点も大きいでしょう。

ステージⅠでも5年生存率が低いのは、すい臓がんです。
すい臓がんは進行が早く、短期間の間に他の部位へ転移するケースが多く、ステージⅠの5年生存率は約40.5%となっています。

全がん協部位別臨床病期別5年相対生存率(2004-2007年診断症例)

部位   全症例 手術症例
大腸 症例数 4,389 3,616 4,467 3,197 16,169 14,428
生存率 99 90.8 81.6 18.1 75.8 78.8
症例数 14,856 1,966 2,464 4,182 23,960 15,354
生存率 97.2 65.7 47.1 7.2 73 77.2
症例数 8,678 1,591 5,498 5,990 22,075 10,512
生存率 82.9 48.2 22.1 4.9 43.8 77.1
前立腺 症例数 332 5,862 1,265 1,171 8,762 3,394
生存率 100 100 100 62 100 100
乳房 症例数 8,988 9,145 2,137 884 21,322 20,156
生存率 99.9 95.2 79.5 32.6 92.9 95.4
肝臓 症例数 1,687 1,286 1,187 590 4,958 1,441
生存率 57.3 38.7 15.5 4 34.8 58.7
すい臓 症例数 278 792 804 2,051 4,081 1,429
生存率 40.5 18.2 6.3 1.6 9.2 22.4

10年生存率が高かったのは前立腺がん、甲状腺がん、子宮体がん、乳がんなど。
一方30%未満と低い数値を表しているのは、すい臓がん、肝臓がん、胆のう・胆道がん・食道がんでした。

全がん協部位別臨床病期別10年相対生存率(2004-2007年診断症例)

部位   全症例 手術症例
大腸  症例数 904 770 754 554 1,700 463
生存率 96.8 84.4 69.6 8 69.8 70.4
胃  症例数 3,706 519 661 1,128 6,413 4,726
生存率 95.1 62.7 38.9 7.5 69 73.6
肺  症例数 2,117 521 1,688 1,559 6,100 2,954
生存率 69.3 31.4 16.1 3.7 33.2 57.8
前立腺  症例数 71 503 306 329 1,306 511
生存率 93 100 95.6 37.8 84.4 100
乳房  症例数 1,412 2,133 492 227 4,401 4,240
生存率 93.5 85.5 53.8 15.6 80.4 82.8
肝臓  症例数 388 498 426 285 1,700 463
生存率 29.3 16.9 9.8 2.5 15.3 29.8
すい臓  症例数 57 99 126 513 895 334
生存率 29.6 11.2 3.1 0.9 4.9 11.1

乳がんの転移・再発の危険性

転移・再発とは、がん細胞がもとあった場所から血液やリンパ液によって他の臓器に運ばれ、そこで新たながんのかたまりをつくることをいいます。
遠隔転移とも呼ばれ、肺や骨、肝臓や脳への転移が多く、乳がんの診断時すでに遠隔転移があった場合、ステージⅣと診断されます。

乳がんの遠隔転移は、何らかの症状を伴う場合と、そうでない場合があります。
たとえば肋骨であれば胸の痛みがある、肺だと息切れがある、咳が続くなどの症状がみられます。これらの部位に転移していても何も症状がないこともあります。
脳の場合は頭痛やめまい、手足の麻痺などがありますが、それががんの転移によるものか、他の原因による疾患なのか専門医にかかって診断する必要があるでしょう。

胸の痛み

乳がんの場合は、手術後3年以内の転移・再発がみられることが多いのですが、なかには10年以上経ってから再発するケースもあります。
手術をしたほうの乳房や胸壁、その周囲の皮膚やリンパ節にがんが再発するのを局所再発といい、遠隔再発とは治療の方針が異なってきます。

乳がんは手術後2~3年以内に再発する場合が多いので、手術後3年以内は3~6カ月ごとに検診を受けるようにしましょう。
4~5年目は6~12カ月ごと、5年以降は年1回と、回数を減らしていきますが、10年後や20年後に再発することもありますので、油断は禁物です。
自宅でできるセルフチェックは毎月行ってください。
しこりや皮膚のひきつれ、違和感があるときは、次の検診を待たず病院へ。
早期治療が5年、10年、それ以上の生存率を高めます。

「乳がんと診断されただけでもショックだったのに。しかも治療をしたのに再発、転移なんて」

誰もがそう考えるでしょう。
意気消沈して何も手につかなくなる人も少なくありません。
悩み続けていても、治療を受けても過ぎていく時間は同じです。
当然ながら、がんは擦り傷や打撲のように放っておいても体が自然に治癒してくれるものではありません。

がん

再発の治療は、局所再発と遠隔転移とでは異なります。
局所再発の場合は、早期に発見できれば治癒を目指すことが十分に可能です。
一般的に再度手術でがんを取り除いたあと、必要に応じて薬物療法や放射線療法を行います。

これに対して遠隔転移の場合は、治癒を目指すことは非常に困難であるため、がんの進行の抑制、つらい症状を和らげるなどして、QOL(Quality of life=生活の質)を維持していく治療が主体になります。

だから乳がん検診を受けましょう

乳がんの手術は古代エジプトですでに行われていました。
紀元前3000年エジプトの医師がパピルスに残した記録によると、数人の乳腺疾患患者がおり、そのうち一例は治らないとして手を付けられませんでしたが、もう一例は切開して排膿し、残りの腫瘍は焼却あるいは腐敗させたとあります。

乳がんの手術

日本の乳がんの手術は1804年、花岡青洲が日本初の麻酔薬を用いて行いました。
手術の方法は青洲が考案したメスやハサミを用いて、がんの部分だけを乳房から摘出するというものでした。
この成功を受けて青洲の名はたちまち日本中に広がり、全国から乳がん患者が集まってきたといいます。
青洲が手術した乳がん患者の名前は「乳巌姓名録」という記録に遺されており、その数は152名。
乳がんは昔から女性に恐れられていた疾患でした。

21世紀、日本人女性の乳がん罹患率は年々上昇しています。
メディアでは乳がんに関わるさまざまな情報が飛び交っていますが、大切なのは知識を仕入れることではなく“乳がんで大切な命を落とさない”ということではないでしょうか。

早期発見

乳がんに関わらず、どのような疾患でも早期発見できれば生存率が高くなります。
「特に症状がないから」「忙しいから」と後回しにして、気がついたら深刻な状況になっていた、という状況にならないためにも定期検診を受けるようにしましょう。
大切な家族、親しい友達と一緒に検診を受けに行くことで、お互いの大切な命を守ることにもつながります。

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