乳がんの基

乳がんとは何か? その種類を知ってください。

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国立がん研究センター/がん対策情報センターが発表した「2016年のがん統計予測」によれば、女性のがん患者は2016年に全体で43万4千人、うち乳がん患者は9万人になるとの予測が出ています。
これは全がん患者数の20パーセントに当たり、女性が患うがんの中でも第1位です。
また、同データでは2016年のがん死亡者数が、全体で15万3700人、うち乳がんは1万4千人になると予測されています。
そんな乳がんに関して、皆さんはどれぐらいご存知でしょうか。
今回は乳がんとは、どんながんなのか。その原因や種類についてご紹介します。

そもそも「がん」とは何なのでしょうか。
人間の細胞は、細胞ごとに固有の遺伝子を持っており、その遺伝子の情報に従い、周囲の状態に合わせて増殖を調整しています。
しかし遺伝子が何かしらの要因によって傷つくと、遺伝子の情報が乱れ、増殖し続けてしまいます。これが「がん細胞」です。
がん細胞が全てがんになるわけではありませんが、そのがん細胞が増殖した結果、がん病巣(がんのしシコリ)が形成される仕組みになっています。

乳がんとは乳腺にできるがん

そんながんのひとつ、乳がんは左右の乳房の乳腺にでき、増殖していくものを指します。
乳房は乳腺、脂肪などの皮下組織、そして皮膚で構成されており、中でも乳房の大半を占めるのが乳腺です。大人の女性の乳房は、乳頭(乳首)を中心として、15~20の乳腺が放射線状に広がっています。
さらに乳腺は細い枝状の「乳管」と、その先につく袋状の「小葉」で形成されており、乳がんには主にこの乳管にできる「乳管がん」と、小葉にできる「小葉がん」があります。
小葉は母乳を作るところ、乳管は小葉で作られた母乳を乳頭まで運ぶ管です。
乳がんのうち90パーセントは乳管がん、5~10%は小葉がんです。

次に、乳がんにはどんなタイプがあるのでしょうか。乳がんの分類法は下記の3種類です。

・組織型:がん組織の構造と特徴で分類する
・病期(ステージ):乳がんの進行度で分類する
・サブタイプ:乳がん細胞の遺伝子の特徴で分類する。

 

乳がんの分類法「組織型」

「組織型」は大きく分けて2つ。「非浸潤がん」と「浸潤がん」に分けられます。

非浸潤がん

がん細胞が、乳管や小葉の中に留まっている状態を「非浸潤がん」といいます。乳管や小葉の中でがん細胞が増えるため、原則的に転移することはなく、手術によって治癒できるがんと言えるでしょう。この非浸潤がんは、がん細胞が留まっている箇所によって

・非浸潤性乳管がん(乳がん全体の7パーセント弱)
・非浸潤性小葉がん(同0.1パーセントほど)

の2種類に分かれます。

この乳がんは“超早期がん”といい、がんとしては初期段階で、予後も非常に良い状態です。乳がんの10~20パーセントがこの非浸潤がんの段階で発見されていると言われ、手術で切除すれば、前述のとおりリンパ節や他の臓器に転移する心配は理論的にはありません。

浸潤がん

一方、乳がんの中で多いのは「浸潤がん」です。乳がんのうち80パーセントを占めます。浸潤がんは「非浸潤がん」と異なり、がん細胞が乳管や小葉の膜を破って外に出るため、転移の可能性が高くなります。

では浸潤がんには、どんな種類があるのかをご紹介しましょう。浸潤がんは「浸潤性乳管がん」と「特殊型」に分けられます。

a)浸潤性乳管がん
・乳頭腺管がん

乳がん全体の約20パーセントを占めます。がん細胞がキノコ状に広がって育つタイプです。

・充実腺型がん

乳がん全体の約20パーセントを占めます。周囲を圧迫しながら、乳管の中を広がっていくタイプのがんです。

・硬がん

乳がん全体の約40パーセントを占めます。乳管の外側へ散らばるように発育していくタイプのがんです。

b)特殊型

浸潤がんの「特殊型」は、ごくみられる種類のもので、「粘液がん」「髄様がん」「浸潤小葉がん」「腺様嚢胞がん」「扁平上皮がん」「紡錘細胞がん」などがあります。

先に「非浸潤がんは確実に治療できる」と述べましたが、治療せず放置しておくと、そのまま浸潤がんとなることに注意してください。浸潤がんになると、がん細胞が血管やリンパ節へと入りこみ、リンパ節だけでなく血管を通って遠く離れた臓器に転移する危険性が出てきます。
乳がん全体の80~90パーセントはこの「浸潤がん」の段階で見つかっています。転移の可能性があるため、多くは手術だけでなく抗がん剤やホルモン剤などの全身療法が必要となります。

乳がんの分類法「病期(ステージ)」

「病期(ステージ)」は、シコリの大きさやリンパ節の転移などを調べ、がんの進行具合によって5種類に分類されます。この病期(ステージ)による分類は、手術の必要性・方法などを考えるための基本情報なのです。
5種類のステージとは0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期で、状態によってさらに細かく分かれていきます。では、そのステージの種類を見ていきましょう。

【0期】

乳がんが乳腺の中に留まっている、非浸潤がん=超早期がん。

【Ⅰ期】
・ⅠA期

シコリの大きさが2cm以下で、脇の下のリンパ節に転移がない。

・ⅠB期

シコリの大きさが2cm以下で、脇の下のリンパ節へ微小な転移がある。

【Ⅱ期】
・ⅡA期(a、bのいずれか)

a)シコリの大きさが2cm以下で、脇の下のリンパ節への転移がある。
b)シコリの大きさが2~5cmで、脇の下のリンパ節への転移がない。

・ⅡB期(a、bのいずれか)

a)シコリの大きさが2~5cmで、脇の下のリンパ節への転移がある。
b)シコリの大きさが5cm以上で、脇の下のリンパ節への転移がない。

【Ⅲ期】
・ⅢA期(a、b、cのいずれか)

a)シコリの大きさが2cm以下で、脇の下のリンパ節への転移はないが、胸骨の内側のリンパ節(内胸リンパ節)が腫れている。

b)シコリの大きさが5cm以上で、脇の下か胸骨の内側のリンパ節への転移がある。
c)シコリの大きさに関わらず、脇の下のリンパ節への転移があり、かつリンパ節がお互い癒着していたり、周辺の組織に固定している。

・ⅢB期

シコリの大きさや転移の有無に関わらず、シコリが胸壁に固定しているか、皮膚にシコリが現れる、皮膚が崩れる、皮膚がむくんでいる、といった状態。

・ⅢC期(a、bのいずれか)

a)シコリの大きさに関わらず、脇の下と胸骨の内側のリンパ節どちらにも転移がある。

b)シコリの大きさに関わらず、鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある。

【Ⅳ期】

シコリの大きさに関わらず、遠くにある他の臓器に転移している。

※骨、肺、肝臓、脳などに転移しやすい

乳がんの分類法「サブタイプ」

乳がんを、乳がん細胞が持つ遺伝子の特徴で分類したものを、「サブタイプ分類」と呼びます。

たとえば免疫組織染色という方法は、乳がん組織に色をつけ、染まった部分の割合や染まり方の強さなどから陽性か陰性かを判断するというものです。
調べるのは「エストロゲン受容体(ER/エストロゲンレセプター)」、「プロゲステロン受容体(PgR/プロゲステロンレセプター)」、「HER2(ハーツー)タンパク」と「Ki-97」の有無。
その結果によって「ルミナ―ルA」「ルミナールB」「HER2」「トリプルネガティブ」の4種類のサブタイプに分類されます。
各タイプの詳細はまだ流動的な部分もありますが、次のとおりです。

ルミナ―ルA

・乳がん全体の約60パーセント
・ER、PgRの両方あるいは片方が陽性
・HER2は陰性
・Ki-67は14パーセント未満
・推奨される全身療法:ホルモン療法

ルミナ―ルB

・ER、PgRの両方あるいは片方が陽性
・HER2は陽性もしくはHER2が陰性でKi-67が14パーセント以上
・推奨される全身療法:ホルモン療法、化学療法、抗HER2療法(HER2陽性の場合)

HER2

・ER、PgRの両方あるいは片方が陰性
・HER2が陽性
・推奨される全身療法: 化学療法、抗HER2療法、ホルモン療法(ERかPgR陽性の場合)

トリプルネガティブ

・ER、PgRが陰性
・HER2が陰性
・推奨される全身療法:化学療法

ルミナ―ルAが最も予後が良いとされていますが、サブタイプは治療方法の選択だけでなく、こうした予後予測にも役立てられる分類法です。

その他の乳がん

炎症性乳がん

浸潤がんの一種である「炎症性乳がん」の症状は、急速に乳房が赤く腫れ、硬くなるというものです。炎症性乳がんであれば治療法としては全身治療となります。完治は難しいとされていますが、稀ながんのひとつでもあります。

パジェット病

乳頭の表面に出血やカサブタなどの変化が見られた場合、「パジェット病」の可能性があります。このがんは乳頭近くの乳管から発生し、乳頭の表面に進展したものです。ただしシコリはなく、多くは非浸潤がん=予後は良いがんです。

乳がんは治療法も様々なタイプがある

ここまで見てきたとおり、乳がんには多くの分類法と種類があります。そのため、治療法も様々です。検査で判明したステージやサブタイプなどの分類から、患者さんに合わせた治療法を選択していくことになりますが、逆に言えば患者さん側からも多くの治療法の中から自分の生活スタイルに合ったものを選ぶこともできるということです。
また、乳がんは他のがんと同じく、手術療法と薬物療法といったように、複数の方法を組み合わせて治療を行います。それだけ治療法は幅広いのです。
いずれにしても、自分にとってベストの治療法を選択するためには、上記のように「乳がんとは何か」を事前に知っておくことが重要でしょう。こうした情報が、検査を受け、いざ――という時に少しでも不安を軽減してくれるはずです。

乳がんの検査・治療にはご家族の理解や情報の共有が必要となります。
乳がんは早期発見で90パーセント以上が治癒できる、と言われています。
大切なのはまず定期的に検査を受けること、そしてしっかりと乳がんに関する知識を持ち、いざという時のために、自身で情報を得ておくことなのです。
同時に、お近くの病院やクリニックもぜひ役立ててください。必ずあなたの強い味方になってくれるはずです。

 

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